たとえば、そのような人々は日々の治療に対して病院を訪れる可能性が高くなるだろうし、予防的な状況で通院することもあるだろう。
そして、このような追加的な医療サービスの利用の1部は、民間医療保険だけではなく公的医療保険の負担となり、公的部門の医療支出を増やすことになるだろう。
例として、入院に伴う定額自己負担(初診料のようなもの)が500ドルである人々を考えてみよう。
この定額自己負担が十分高ければ、肺炎にかかっている時でも、人々は病院に入ることよりも家で治療することを選ぶ。
ここで、この500ドルの定額自己負担を民間保険が提供するとしよう。
入院することの自己負担がなくなれば、この保険を購入した人々は肺炎で入院することになるだろう。
そして、最初の500ドルの初診料は民間医療保険で提供されるものの、残りの医療費は公的医療保険で賄われる。
もし、この入院費が2,000ドルであるならば、この公的医療保険の負担は1,500ドルである。
結果として、民間医療保険はモラルハザードを誘発して公的医療保険にも負担を行わせたのである。
このモラルハザード効果は、民間医療保険が公的医療保険によって補助金が与えられていることを意味する。
民間医療保険のコストは500ドルの初診料であるが、これによって患者が消費できる保険給付は2,000ドルである。
追加的医療保険が生み出す医療費の4分の3が公的医療保険によって支払われるのである。
このような状況では、公的医療保険の許容範囲を広げることが、かえって公的医療保険給付を減らすことになりかねない。
今、個人は健康と病気の2つの健康状態に直面しているとする。
医療保険の未加入者が病気になれば、医療支出として郷だけ支出することになる。
ここでもし医療保険がなければ、人々は消費を行うことになるだろう。
病気になった保険加入者が所得を減らさないように、保険会社が保険加入者に支払う保険給付金額の集合である。
モラルハザードがない時には、この線の傾きは病気になる確率の逆数にマイナスを付けたものとなるだろう。
モラルハザードがある場合には、追加的な医療サービスの利用度が高まることから、保険会社が賄える医療費・非医療費が減少することを反映し、この線の傾きは緩やかになる。
ここで公的保険が不完全だとしよう。
たとえば、公的部門がB点のように、ある程度リスクを回避しているものの、それでも病気になったときの負担は大きい保険を提供するとしよう。
これに伴う無差別曲線も同様に図上に描かれている。
この時、人々は若干の運営費用を伴うものの、民間保険で完全な保険状態(病気の時と健康なときで所得が変わらない)が得られるものとしよう。
つまり、もし人々が支払いをすれば、公的保険の自己負担分をも支払う保険が得られるのである。
消費者はこの追加的医療保険を選ぶことになるであろう。
つまり、追加的医療保険に対して支払う運営費用よりも自己負担分を支払わずに済むことの価値のほうが高いのである。
しかしながら、もし公的な医療保険がもっと寛大に自己負担額を減らすのであれば、このような追加的医療保険の魅力は少なくなるだろう。
たとえば、公的な医療保険が寛大に保険給付を行うとしよう。
追加的医療保険には価値があるものの、追加的な運営費用を負担してまで加入する価値はなくなるのである。
それゆえ、公的な医療保険が寛大になるときには、追加的医療保険に加入する人々はほとんどいなくなるのである。
たとえば、もし定額自己負担が250ドルまで引き下げられれば、人々は追加的医療保険を買わなくなるとしよう。
この時、肺炎にかかった半分の人々が入院することになれば、公的部門のコストはより保険給付を寛大にすることでかえって低く抑えられているのである。
待ち行列を飛び越す種類の保険。
3つ目のタイプの追加的医療保険は公的保険でも賄われる医療に対して、より迅速に医療を提供させる種類の保険である。
アメリカではなく、医療機関に対する制約がある多くの国々では、医療サービスを受けるためにしばしば待ち行列に並ばなければならない。
緊急医療に対しては迅速な処置がなされるけれども、それほど緊急性を要しない処置に対しては1年やそれ以上待たなければならないこともある。
医療に高い価値を見いだしている人々はこのような待ち行列の最前列に飛び越えることを望むことだろう。
今、啓部を怪我して、瞥部の手術を待っている人を考えてみよう。
手術を受けるためには、まず整形外科医の診断を受け、それから外科手術を受けなければならない。
供給割当制のもとでは、整形外科医の診断を受けるまで6カ月から1年も待たなければならず、手術を受けるにはさらに半年待たなければならないかもしれない。
この時、待ちたくない人は整形外科医の訪問に私的な民間保険を使うことだろう。
このようなことを許している国では、公的医療保険外の患者を診るには1週間や2週間しかかからないはずである。
それから、その人は公的医療保険の下で整形外科医に診てもらったがごとく、公的な病院で手術の待ち行列に並ぶことができる。
もしくは、もっと極端なケースでは、手術でさえも民間医療保険を使うかもしれない。
民間医療保険はすべての治療の費用を必ずしも負担することなく、無コストで、少なくとも手術までの時間を半分もしくはそれ以上に短縮させることができる。
高所得者は低所得者よりも追加的医療保険を得るだけの余裕を持ち、しかも待ち時間を減らすことに高い価値を持っているだろう。
待ち行列を飛び越すための保険が、低所得者よりも高所得者に良い治療をもたらすことを恐れ、いくつかの国々ではこのような形の追加的医療保険を禁じている。
公的医療保険の対象分野に対して、追加的な支払いを自主的に行うことすら禁じている国もある。
たとえば、カナダでは公的医療保険の対象サービスに対して、医者が民間の支払いを受けることを禁じているのである。
しかし、このような保険によって、低所得者は必ずしも状態が悪くなるとは限らない。
つまり、人々がこのような追加的医療保険を使えば、さまざまな資源が他部門から解放され、同じ公的部門の負担の下で、総じて医療サービスの供給量が増えるかもしれないからである。
例として、さきの整形外科医を考えてみよう。
この整形外科医は朝9時から夕方5時まで働いている。
ここで、追加的医療保険が許されれば、9時から5時までは公的保険の患者を診て、5時以降に追加的医療保険の患者を診ることになるかもしれない。
この時、民間医療保険の患者は医者に早く会えるので明らかに状態が良くなるが、それ以外の患者も追加的医療保険を持つ患者が公式の診察時間にいなくなるので、状態が改善する。
もちろん、追加的医療保険を持つ患者ほど待ち時間は減らないけれど、公的医療保険の患者も待ち時間が減ることから効用が増すのである。
また、このように医者が労働時間を増やさないときでさえも、公的医療保険しか持たない患者の状態は改善する。
なぜなら、高所得者が医療サービスを民間で賄うことを選択した場合には、公的な医療保険財政にそれだけ余裕が生まれ、保険給付を増やすことができるからである。
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